2013-09-28

中間層崩壊

被災建築物応急危険度判定、の講習会でのはなし、続きます。

講習会全体としては、東京都の地震による災害対策、応急危険度判定制度、実際の判定活動、判定にまつわる必要な技術について、説明がありました。

地震大国ニッポンとしては、活動自体は目立ちはしませんが、直接命にかかわることでもあり、重要な立ち位置だなぁと思いながら拝聴しておりました。


東京都としては、防災にあたって直下型地震を想定していて、どちらかというとほとんどを津波で失った東日本大震災よりは、建物崩壊による即死・圧死が大半と言われている阪神・淡路大震災の方を重点的に見本にしている感じがしました。

関東大震災の時の経験もあるからでしょう。


講習会の終盤では、阪神・淡路の震災について、どのような建築物被害があったか、という解説がありました。

既に17年、18年と月日が経っており、当時東京にいて被災しなかった私としては、記憶がかなり薄れていますが・・・

壇上に立たれた先生のお話によると、中間層崩壊と呼ばれる、8~10階程度の建物の3~4階が、だるま落としのように崩壊する例が多かったと。

構造設計を生業にされてる方にとっては、ミミタコかと思いますが・・・




理屈としては、こうだそうです。

保有水平耐力の考え方で言うところの、地震による水平力(必要保有水平耐力)の方が、建物の水平耐力(保有水平耐力)より大きかったために崩壊した。


なのですが・・・
なぜ中間層なのか?というと。


構造設計の理屈上は、上階にいくほど、その階の柱が支える荷重は軽くなるから、柱は下階より細くてもいいことになります。

柱のサイズを切り換える層(=階)においては、下階の太い柱からその階の細い柱に地震力が伝わるわけですが、地震発生当時、一体そこで何が起きたのか?

細い柱に地震力が集中してしまって、柱の保有水平耐力が足りず、耐え切れず壊れてしまった(=崩壊)。

当日は、一級建築士対象の講習会ということで、もっとあっさり解説されましたが、一級建築士の試験受験者の方向けに、専門用語を交えて丁寧に書くとこんな感じです。

なので、中間層でなくとも、柱のサイズが切り換わって細くなる階であれば、起こりうることですよね。


当時の大学の授業を思い起こすに、腰壁の影響による柱のせん断破壊、鉄骨ブレースの接合部破断、液状化、圧密沈下、などは詳細に解説してもらった記憶があるものの・・・私自身、保有水平体力とか中間層崩壊という言葉自体をまったく記憶しておらず、だめだめ学生でした。泣

やっとこ先日いろんな知識がつながって、そ・・・そうゆうことだったのか!という具合。
こんなレベルで、恥ずかしい限りです。とほほ

改めて、建築士的モノゴゴロついてから(?)構造のいろはを教えてくださった、ゴマさんこと槇田さんに感謝です。



ということで、受講後ぐーぐるセンセーに、「阪神 地震 中間層 崩壊」と聞いてみたら、大量に当時の写真が見られました。

改めて、建物の壊れ方が衝撃でした。

だるま落としのように、中間層が破壊されています。
戸建ての住宅も、1階が軒並みぺちゃんこ。
マンションが崩壊して、しりもちついてるものとか・・・
こんなだったんですね・・・


講習会では、この崩壊に至るまでの時間は、揺れ始めてからたったの7秒~10秒程度とのこと。
た、助からない・・・

即死、圧死が圧倒的に多かったとの言葉に、納得。
重い現実ですね・・・


なお、今回の被災建築物応急危険度判定委員用講習会の解説で使われた揺れの実験映像は、おなじみの防災科学技術研究所でのものと思います。
壇上の先生は、この初回の実験をとりまとめた坂本功先生(東大名誉教授工学博士)です。

下記に、実験のリンクをはっておきます。
同じ条件の家で、壊れた方は耐震補強していないもの、壊れていない方は耐震補強したもの、だそうです。

実験当日、耐震補強した側の家も倒れたらどうしようか、大丈夫だろうかと、はらはらしながら見守ったとのことでした。

独立行政法人 防災科学技術研究所
兵庫耐震工学研究センター
http://www.bosai.go.jp/hyogo/research/movie/movie-detail.html#2


ただ、救いだったのは。
完全に崩壊している建物の脇で、無傷でいる建物もあると。
中間層崩壊をしている建物の横で、総ガラス張りの建物がほとんど無傷で残っていたようです。

外装、カーテンウォールに対する層間変位の設計がうまく行っている例です、専門家としてはこれは技術的に耐震に成功していると言えると、少し誇らしげにおっしゃってました。


応急危険度判定って、二次被害を防止とか、なかなか地味な活動ではありますが・・・

東京都では判定委員として登録者は11000人(H25年現在)いるものの、実際被災した場合に、被災当事者となってしまって、活動要請に応じられる建築士も減ることが考えられることから、積極的に増やす方向だそうです。
先日の講習会も、都庁の500人収容の会場が満員でした。

東京に限らず、当ブログ記事を読まれて、参加される方が増えることを願います。



追記:
国土交通省近畿地方整備局のサイトですが、このようなサイトを見つけましたので、お時間ある際に見ていただくと、今後の防災対応として教訓になるのではと思います。

阪神・淡路大震災の経験に学ぶ


東日本大震災の場合は、津波被害による死傷者が大半だったと言われますが、やはり緊急車両の通行妨げなど初期の救助ができない状況だったのは、阪神・淡路の時と変わらないような気がします。

東京の木造密集地域に住んでいる身としては、耐震化啓蒙も含めて、いろいろと普段から準備しておかなければいけないと思いました。

2 件のコメント:

  1. 講習で示される数々の実例を見ると、とても説得力がありますよね。
    E-ディフェンスの動画はochaさんから紹介されて、大いに学科学習の助けになりました。

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    1. けろさん、コメントありがとうございます!
      東日本大震災の時とか、津波の映像があまりにも衝撃すぎて、直視できず・・・

      E-ディフェンスの地震波も、東日本大震災の波形の実験とか見ちゃうと、東京にいたので現地よりぜんぜんゆれてないのですが、余震も多かったし思い出してしまって・・・見れてないのです。

      今回の講習会では、何度も流しますので、とおっしゃって、同じ映像を繰り返し流してらっしゃって。
      よく覚えておいてくださいと。

      しんどかったですが、忘れないと思います。
      コメントありがとうございます。

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